公開日 2019年2月15日
更新日 2019年2月28日
臼杵の歴史資料
臼杵市は現在、数万点の歴史資料を所蔵しています。
絵図、古文書、典籍など、その種類と内容は多岐にわたり、専門家から注目されている資料も数多くあります。
臼杵市所蔵の資料の特徴は、旧臼杵藩主・稲葉家伝来の歴史資料を中心に、系統的に伝来していることです。
これらの資料を見れば、この地域の歴史を知ることができるだけでなく、稲葉家が戦国時代を過した美濃、江戸時代に藩邸を置いた江戸など、様々な国内各地の歴史を知ることができます。
それぞれの資料について、その概要と特徴をご説明します。
1.近世絵図資料群(きんせいえずしりょうぐん)【大分県指定有形文化財】
総点数1,505点(絵図1,081点 関連史料424点)
全点が一括で県指定有形文化財です。
臼杵藩主であった稲葉家より寄贈された絵図資料群で、江戸~近代初期の絵図と、絵図に関連する古文書や絵図を入れるための箱や袋などの容器からなります。
*絵図とは古い地図(古地図)のことです。
特徴
江戸時代の絵図は、木版印刷が主流でしたが、臼杵の絵図資料群は、費用がかかる手描きの絵図がほとんどであることが特徴です。
これは、この絵図資料群が、臼杵藩が絵図を写させたり独自に描かせたりしたことによって形成されたことによります。
また、臼杵藩以外の絵図が全体の80%程を占めていますが、中には絵図に描かれた現地には、既にその絵図は残っていないということもあります。
臼杵市は、このような希少な絵図を多く所蔵しているのです。
この近世絵図資料群は、個々の絵図の資料的価値が非常に高いものですが、こうした資料がまとまった「群」として大量に引き継がれていることも、研究者の間で高く評価されるポイントとなっています。
- 寛永臼杵城下絵図
- 海添組仁王座村分間量地絵図
2.古文書【一部が県・市指定有形文化財】
※現在、臼杵藩政史料調査事業で調査中です
総点数は現在調査中ですが、10,000点以上となる見込みです。
- 御会所日記
この資料のうち、「御会所日記(ごかいしょにっき)附(つけたり)御会所日記頭書(ごかいしょにっきあたまがき)古史捷(こししょう)」448点は、平成21年3月に、一括で県指定有形文化財になっています。
これは、藩の仕事について記された記録です。
県内では、このような資料はほかに現存しません。
この他にも多くの藩政史料が市の所有となっていますが、その詳細については現在調査中です。
また、臼杵市の所蔵する古文書の中には、藩政史料以外にも、様々な資料があります。
家老村瀬家の資料であり、天保の藩政改革の実態を知ることができる「村瀬家資料」、臼杵藩の文芸に関する史料が多く含まれている、臼杵藩家老の「後藤家資料」、図書館設立の経緯に関する「荘田家資料」などです。
稲葉家資料の伝来について
明治維新後、臼杵藩は廃藩置県、版籍奉還などを経て解体されました。
そのとき、臼杵藩や稲葉家の保有する資料は、公の資料である藩庁資料と、稲葉家が個人的に収集した資料の2つに分けられました。
藩庁資料の一部は北海部郡役所や臼杵町役場に引き取られて地域行政の基礎資料とされましたが、後に、大正6年(1917年)設立の財団法人臼杵図書館(戦後、市立臼杵図書館に移行)へ寄贈されました。
一方、稲葉家の資料は、稲葉家の親族などが、本家からその管理を任されました。
資料は、稲葉家別邸(現在の下屋敷)土蔵などで管理されたと思われます。
臼杵図書館設立後、大正6年(1917年)から昭和初期(昭和10年。1935年)にかけての間に、絵図・古文書・典籍などが稲葉家より臼杵図書館に寄贈されました。
他にも、地元の蔵書家、旧藩士族の子孫などから、数多くの資料が市に寄贈されてきました。
中には、臼杵藩家老や鉄炮頭などを努めた後藤家、山田家、渡辺家などの家に伝わっていた資料も含まれます。
3.典籍
※臼杵藩政史料調査事業で調査中です
約24,000冊にのぼる、次の「主なジャンル」に掲げた分野の典籍から成り立ちます。
典籍の主なジャンル
神・仏書、哲学・思想、文学(和歌・漢詩)、歴史、地理、伝記、法律政治経済、医学、理学、数学、美術、芸能、兵学、雑書
- 竹取物語
- 国枝外右馬江戸日記
中でも、全体の約8割を占めるとみられる稲葉家寄贈の典籍は、現存するものが少ない室町期のものを含む大変貴重な資料です。
特に、戦国時代に隆盛を見せた、複数の人々で和歌を読みあってつくる「連歌(れんが)」に関係する典籍が多いことが特徴的です。
また、稲葉家が臼杵に移る前、美濃にいた頃の当主で、織田信長らに仕えたことで有名な稲葉一鉄は、漢方医術や和歌などの当時一流の文化を学んだことでも有名です。
その中で彼は、江戸時代の漢方医術に大きな影響を与えた医師・曲直瀬道三(まなせどうさん)に学び、道三自らが記した奥義書を与えられたのです。
現在、その奥義書は臼杵市が所蔵しています。
このように、臼杵市は曲直瀬道三と稲葉一鉄との関係を示す資料を多数所蔵していますが、このような資料は臼杵市にしか残っていないものであり、その意味でも大変貴重です。
この他にも、臼杵市は室町期の年中行事などについての典籍を所有していますが、現存するものの少ない室町期の典籍をまとまって所有しているのは、県内では臼杵市だけです。
資料一覧
以上の代表的な資料とその他をまとめたものが以下の表です。
表中の※について・・・現在調査中のため、今後点数の変更の可能性があるものです。
資料区分 | 点数 | 概要 |
---|---|---|
絵図 | 1505点 | 稲葉家より伝来した絵図群。 「近世絵図資料群」として全点県指定文化財。 |
古文書 (一部が県・市指定有形文化財) |
約10,000点※ | 臼杵藩(稲葉家)の古文書が中心。荘田平五郎、村瀬庄兵衛に関する資料含む。 |
典籍 | 約24,000冊※ | 臼杵藩(稲葉家)の典籍を中心に、市内からの寄贈典籍。宗教から文学、歴史、医学、芸能まで、幅広いジャンルの資料を含む。 |
その他 (美術工芸品・塑像、掛軸、油絵など) |
約70点 | 福田平八郎、賢巌禅師(けんがんぜんじ)などの絵画、稲葉家伝来の「臥龍甲(がりょうこう)」(兜)、日名子実三作「晩春」(塑像)、山本達雄などの書跡、奥平家嫁入駕籠、刀、鑓 など |
古写真 | 約100点※ | 明治期の臼杵城下、大正時代の磨崖仏など |
- 臥龍甲
- 臼杵城古写真
貴重な歴史資料が、臼杵市歴史資料館でご覧いただけます。
以上の資料「群」を見れば、この地域の歴史を知ることができます。
臼杵市歴史資料館ができるまでは、これらの貴重な資料は一般に公開することができませんでした。
これからは、この資料館で、地域の歴史をたのしく学んでいただくことができます。
ぜひ、足をお運びください。
*展示資料は、企画展毎に入れ替わります
また、資料の保存のため企画展の間も資料の入替えがございます。