公開日 2019年2月6日
更新日 2019年2月28日
- 地域
- 下南地域
- 名称
- コジイの原生林(こじいのげんせいりん)
- 所在
- 臼杵市大字深田
- 備考
- 昭和61年7月調べ
- 説明
- 臼杵磨崖仏が所在する土地として知られている市内中尾・深田には、県内でも珍しいコジイの原生林が残っています。
コジイが残っている場所は、日吉社の境内地にあたり、ほとんどの人の手が加えられることがなかったため、自然林としての姿をとどめることができたものと思われます。この自然林には、コジイのほかイチイガシ・ツバキ・タブノキ・イヌガシ・モチノキ・コバンモチなどの高木、タラヨウ・イズセンリョウ・センリョウ・クチナシ・アオキなどの低木も多く、樹種は豊富です。
臼杵は、落葉広葉樹林や常緑広葉樹林が植生する照葉樹林帯に属することもあり常緑のカシやシイの木が多くを占めています。現在では、この日吉社の社叢だけにシイノキ属の原生林としての姿が残っていますが、数千年から数百年前までは、周辺地域のいたるところで常緑広葉樹のカシやシイの自然林が見られたと思います。しかし、明治以降、林業振興のため生産材として価値の高いヒノキやスギの植林が盛んに行われると、それと比例するように自然林の伐採が進み、今日では一部をのぞきほとんどその姿を見ることができなくなったと言えます。
昭和五十一年から昭和五十七年にかけて、この日吉社のコジイ林の北東に広がる湿田で発掘調査が行われ、鎌倉から室町時代にかけての建物跡の柱穴が非常にたくさん発見されました。この柱穴のいくつかに柱根が残っていました。
これらの柱根は底面や側面に加工痕を残す直径15~20センチの丸柱であることがその形状からわかりました。この材を分析したところ、すべてシイノキ属の木材でした。この当時(鎌倉・室町時代)の寺社仏閣の建築材はヒノキ・スギ・コウヤマキなどの針葉樹林が優良材として使用されることが多く、耐久性が悪く、乾燥や吸湿によって収縮や膨張を起こしやすく、狂いを生じやすい広葉樹材はあまり使用されていませんでした。
こうしたなか、湿田から発見された建物の柱材にシイノキが使われていたと言うことは、建物の性格にもよりますが、当時、手近なところにシイノキなどの常緑樹林が広がっていたことを示す一つの事実ではないかと思います。
日吉社のコジイ林は、昭和五十年三月二十八日、県の天然記念物に指定されています。